スパイダープラス Tech Blog

建設SaaS「スパイダープラス」のエンジニアとデザイナーのブログ

CREの問い合わせ対応を革新する、私流AI活用術:VSCode中心のモダンワークフロー

はじめまして、スパイダープラスCREチームの藤原です。普段はAIを相棒に、お客様からのお問い合わせ調査や不具合の原因特定に奮闘しています。

CRE(Customer Reliability Engineering)の一員として働く中で、繰り返される問い合わせへの対応や、知識が特定の担当者に依存する「属人化」は、チーム全体の生産性を妨げる大きな課題だと感じていました。
そこで私は、個人の調査効率を劇的に向上させ、チームのナレッジ共有を促進するために、VSCodeを中心としたAI活用ワークフローを構築・実践しています。

本記事では、その具体的な手法を、私自身の調査プロセスに沿って紹介します。

1. 私のモダンワークフロー:階層的調査とAIの適材適所

私が実践しているワークフローは、「階層的な情報収集」と「AIツールの戦略的な使い分け」を二本の柱としています。これにより、調査の速度と精度を最大化します。

ステップ1:ナレッジ検索(最初の5分)

問い合わせ対応の初動は、最も確度の高い情報源から順に検索します。このステップでは、自前で構築したMCP(Model Context Protocol)サーバーが活躍します。

  1. ローカルナレッジキャッシュ (cline-knowledge): 過去の調査履歴(conversations/history.jsonなど)を最初に検索します。こちらはClineの調査履歴等を毎回調査をする度にログとして記録しています。これは、過去の自分やチームメンバーの思考プロセスを直接参照する最も高速な方法です。多くの場合、ここでテーブル構造や関連Issueへのリンクなど、決定的な情報が見つかります。
  2. セマンティック検索 (mcp-server): ローカルで見つからない場合は、全社のGitHub Issueを意味的に検索できる自作のmcp-serverを利用します 。これにより、キーワードが完全一致しなくても、関連性の高い過去の問い合わせを発見できます。

ステップ2:コンテキストに応じたトリアージ(次の15分)

Step 1で関連Issueへのリンク(明確な原因、解決策)が見つからなかった場合に、以下の横断検索に移ります。

  • 横断検索: VSCodeに統合されたコード検索機能や、ローカルにクローンした主要リポジトリを横断的に検索し、エラーメッセージの発生源を特定します 。

ここでもClineに指示を出して行います。

ステップ3:AIパートナーとの深層調査

原因の特定が難しい複雑な調査では、AIツールを「適材適所」で使い分けるハイブリッドアプローチが極めて有効です 。

探索フェーズ:Cline(Claude Sonnet4)と「一緒に考える」

原因が不明な段階では、「横に座って一緒に考えるパートナー」としてCline (Claude Sonnet4) を活用します 。

  • 対話的な調査: Clineは、開発者の指示に基づき、調査計画(Plan)を立て、承認を得てから実行(Act)に移ります 。例えば、「login.jsを解析して、潜在的な不具合がないか調べて」といった自然言語での指示から、コードの解析、問題点の指摘、改善案の提示までを対話形式で進めます 。
  • 多様なツール活用VSCode拡張機能により、コミットの修正履歴、各行の編集者といった情報を視覚的に確認します。また結合ターミナルではコマンドの実行も可能なので、場合によってはgitのコマンドの実行等をIDEの操作より素早く実行できます。

また、同様にVSCode拡張機能でステップ実行して動作確認を行うこともできます。

実装フェーズ:Copilotに「指示して任せる」

根本原因が特定され、対応方針が固まったら、GitHub Copilotの出番です 。

  • 具体的なタスクの委任: 明確なゴールに基づき、Copilotに具体的な作業を依頼します。
    • 顧客への回答文作成: 「この不具合について、一時回避策を含めた丁寧な回答文を作成して」
    • 復旧用SQLの生成: 「影響を受けたユーザーデータを修正するためのSQLを生成して」
    • 修正コードの生成: 「このnullチェックを追加した修正案を作成して」

この「Clineで原因を特定し、Copilotで回避策を提示する」という流れが、最もスムーズで効率的なワークフローです。またCopilotに修正コードの生成を依頼することで改修案をセットにしたワンステップ上の情報連携が可能となります。
最近では、CopilotからGemini CLIを操作するなど、ツールの連携をさらに深化させる試みも行っています。

2. 実践事例:私のカスタムツール連携による調査フロー

このワークフローの核となるのが、私自身が設定したModel Context Protocol (MCP) サーバーです。
この設定画面のように、私はVSCode拡張機能であるClineに、github-issue(過去のIssue検索)とgithub-code-search(コード横断検索)という2つのカスタムツールを連携させています。
これにより、AIとの対話の中から直接ツールを呼び出し、調査をシームレスに進めることが可能になります 。

シナリオ: 顧客から「ログイン画面で時々エラーが出る」という曖昧な問い合わせがCREチームに寄せられ、私が担当者として調査を開始するケースです。

初動調査:@github-issue で類似事象を検索

まず、これが既知の問題か、過去に類似例があったかを確認します。VSCodeのターミナルやチャットで、以下のようにプロンプトを入力します。

> @github-issue ログイン画面 エラー

github-issueツールは、このクエリを元にGitHubリポジトリ内のIssueをセマンティック検索し、関連性の高い過去のIssueを一覧で返します。
これにより、「特定のブラウザでのみ発生する既知の不具合」といった初期コンテキストを数秒で得ることができます。

原因の絞り込み:@github-code-search でコードレベルの探索

Issue検索で「login.jsのCookie処理に問題があった」という過去のIssueが見つかったとします。次に、コードレベルでの影響範囲や具体的な実装を確認します。

> @github-code-search login.js cookie

このコマンドにより、github-code-searchツールがリポジトリ全体からlogin.js内でcookieという文字列を含む箇所をすべてリストアップします。
これにより、IDEを離れることなく、問題の根本原因となっている可能性のあるコードブロックを迅速に特定し、次の「深層調査」フェーズでClineやCopilotに渡すための正確な情報を手に入れることができます。

実装フェーズ:Copilotへのタスク委任

> @github-code-searchによってlogin.jsのCookie処理が原因だと特定できたら、次はいよいよ「実装フェーズ」です。ここでは、具体的な修正作業や顧客への報告といったタスクを、GitHub Copilotに指示して任せます。  

  1. 修正コードの生成 特定したコードブロックをコンテキストとしてCopilotに渡し、具体的な修正案を生成させます。

    プロンプト例:
    「login.jsのこの部分のnullチェックが不足しているため、エラーが発生しています。この問題を解決するための修正コードを生成してください。」

Copilotは即座に修正案を提示してくれるため、開発者はそれをレビューし、適用するだけで済みます。これにより、コーディングの時間を大幅に短縮できます 。  

  1. 顧客への回答文作成 不具合の原因と対策が固まったら、次はお客様への報告です。これもCopilotの得意分野です。

    プロンプト例:
    「ログイン画面で発生していたエラーについて、原因はCookie処理の不具合でした。現在修正対応中ですが、一時的な回避策としてブラウザのキャッシュクリアが有効です。この内容を踏まえ、顧客へ丁寧にお詫びと説明を行う回答文を作成してください。」

このように、原因特定から修正、そして顧客対応までの一連の流れを、AIパートナーと協働することで、迅速かつ高品質に完結させることができるのです 。

3. 結論:AIとの協働で実現する、未来のCRE

このVSCode中心のAIワークフローは、私個人の働き方を根本から変革し、CREチーム全体の生産性向上に貢献できると確信しています。

これは単なるツールの導入ではなく、問題解決のプロセスそのものの進化です。
探索的思考はClineと、実装作業はCopilotと、それぞれのフェーズに最適なAIパートナーと協働することで、不具合の根本原因を迅速に特定し、開発へのエスカレーションを加速できます。
さらに、調査結果をサポートチームと共有し、FAQやナレッジベースの整備を通じて現場での自己解決を促進することで、問い合わせ件数を着実に減らすことが可能になります。

最後に

私流AI活用術をご紹介しましたが…
実はこの記事自体もAIで上手く文章をまとめてもらいました!
AIを活用することで、作業の効率化はもちろん、自分が苦手なことをサポートしてもらう事も可能なのでぜひ活用してみてはいかがでしょうか。


スパイダープラスでは仲間を募集中です。
スパイダープラスにちょっと興味が出てきたなという方がいらっしゃったらお気軽にご連絡ください。

spiderplus.co.jp