
こんにちは、プラットフォーム開発部EMの本田です。
同じ方針、同じツール。なのにチームで差が出ている
組織として「AIを活用していく」という方針が出て、ツールも導入され、全員が同じ環境を手にしました。
しかしチームによってAI活用の成熟度に明らかな差が出ています。
あるチームではAIの話題が毎日飛び交い、新機能を試してはフィードバックを共有し、業務の自動化が着実に進んでいる。
一方で、別のチームのメンバーと1on1をしたとき、AIをほとんど活用できていないことがわかりました。「これ、AIを使えば一瞬では?」と思う場面でも、手動で作業していたり、人に聞いていたりする。
たとえばあるメンバーとの1on1で、開発プロセスの効率化やスキルの作成がまったく進んでいないことがわかりました。
Claude Codeの機能について話を振っても、ほとんど知らない。聞いてみると、調査や壁打ちにチャットのように使っているだけだった。道具は手元にあるのに、その力の大部分が眠ったままになっていたのです。
同じ方針、同じツール。この差はどこから来るのか。しばらく考えて、ひとつの仮説にたどり着きました。この記事では、その原因として気づいた「リーダーのAI解像度」という構造と、私たちのチームで実際にやっていることを書いてみます。
「使ってください」と言うだけでは、何も起きない
振り返ると、AI活用が進んでいないチームにはいくつかの共通点がありました。
リーダーが「AIを使ってください」とは言っている。しかし本人が深く使い込んでいるわけではない。チーム内でAIの話題が日常的に出ることもない。そして全員が同じClaude Codeを使っているはずなのに、どんな機能があるのか知らない。試していない。結果として、道具の力をほとんど引き出せていない。
これは、メンバー個人の意欲の話というより、リーダーの関わり方に原因があるのではないかと思いました。
私自身のチームはおそらく社内でもAI活用が進んでいるほうだと思います。だからこそ、他のチームとの差が目につく場面が増え、この構造に気づくことができました。
そして振り返ると、私たちのチームでも最初からうまくいっていたわけではありません。活用が進んだのは、リーダーである私自身が道具を使い込み、その経験をチームに持ち帰ることを意識的に続けてきた結果でした。
道具に何ができて、何ができないのか。どこまでが得意で、どこからが苦手なのか。私自身、プロとして道具を知る責任があると感じていました。そしてその探求をチームに促していくのはリーダーの役割です。アカウントを発行して「使ってください」の一言だけでは、その役割を果たせていなかった。
解像度が低いと、そもそも「やるべきこと」が見えない
もう少し掘り下げてみます。
AI活用が進まないチームの根本にあるのは、「AI活用を成熟させていく活動を進める」という意思決定がそもそもなされていないことではないか、ということでした。
方針は降りてきた。ツールも配られた。しかし「チームのAI成熟度を上げていくために、何を、どう進めるか」をリーダーが考えていない。なぜなら、リーダー自身のAI解像度が低く、それが「考えるべきこと」だと気づいていないからです。
ここで言う「解像度」とは、道具の能力についての地図を持っているかどうかです。
解像度が高いリーダーは、道具で何ができて何ができないかを体感で知っています。だからメンバーが困っている場面で「それ、AIでできるよ」と具体的に言える。チームの業務のどこにAIを組み込めるか判断できる。成熟のためのロードマップが描ける。
解像度が低いと、同じ道具を持っていても能力の地図がほぼ空白の状態です。何ができるか知らないから、「使ってください」以上のことが言えない。メンバーのAI活用を具体的に支援することもできない。「AI成熟を推進する活動」という概念自体がまだ頭の中にない。
知らないことを知らない——そういう状態に陥っているのではないか。私自身、このことに気づいたとき、かなりはっとしました。
組織の方針が降りてきても、リーダーの解像度が低ければ具体的な活動にならない。メンバーには「使ってください」としか言えない。これがAI活用が進まないチームに共通する構造の一つなのだと思います。
もちろん、チームの状況はリーダーの解像度だけで決まるものではないと思います。メンバー個人の特性や、チームが抱えている業務量など、他にも要因はあるでしょう。
ただ、リーダーの解像度は自分自身でコントロールできる変数であり、ここが変わるとチーム全体の動きが変わりやすいというのが、私が実際に経験して感じたことです。
私たちのチームでやっていること
では、活用が進んでいるチームでは何が違うのか。自分たちのチームを振り返ってみます。
やっていることは、実はそれほど特別ではありません。
- 毎日AIの話題を出す
- アップデートがあればすぐにキャッチアップして試し、感想を言い合う
- メンバーが何かに詰まっていたら「それ、AIに聞いてみたら?」と振る
- うまくいかなかった経験もオープンに共有する
書き出すと当たり前に見えるかもしれません。ただ、これらの行動が自然に生まれるには前提条件があります。リーダー自身が道具を日常的に使い込んでいることです。
具体的な場面を一つ紹介します。私たちのチームでは夕会のほかに、「モブプロ」と称してオンラインで毎日集まる時間を設けています。コードを書く日もあれば、今日試したことや新しく作ったスキルを見せ合うだけの日もある。
最近だと、私がslack-patrolというSlack監視スキルを作ったときの話があります。チームに共有して動かしてみたところ、的外れな回答を返してしまった。「これ、全然使えないじゃないですか」とメンバーに突っ込まれながら、その場でプロンプトを直していく。こういう生々しいやりとりの積み重ねが、道具の限界と可能性をチーム全体の共有知に変えていきます。
使い込んでいるからアップデートに気づく。試しているから何が使えて何が使えないかの感覚がある。失敗しているからメンバーの躓きどころがわかる。これらはリーダーの解像度から自然に派生する行動であって、テクニックとして表面だけ真似できるものではないと感じています。
コードベースにも差は表れます。自動化の仕組みやスキルの作成が進んでいるかどうかは、チームの解像度をそのまま反映しています。
私たちのチームでは、調査やissue起票、仕様の精緻化、コーディング、PR作成、コードレビュー、レビュー対応、テスト、日次レポートの作成と分析まで、以前は人間が手でやっていた作業の多くにAIを組み込んでいます。
結果として、PRとコードレビューのスピードも量も大きく向上し、エンジニアがより本質的な開発業務に集中できる環境に近づいています。これらは誰かに指示されたわけではなく、日々使い込む中で「ここも任せられるのでは」と気づいた積み重ねです。
この差は時間とともに広がる
AIの進化は速く、毎週のように新しい機能が出て、できることの範囲が広がっています。
解像度の高いチームは、この変化に乗り続けています。毎日の小さな学びが積み上がり、複利のように成長が加速する。半年前にできなかったことが今はできる。その差分を常にキャッチアップしているから、次の半年でも同じことが起きる。
この差は、時間が解決してくれる類のものではないと思っています。追いつく先も同じ速度で前に進んでいるからです。
私自身がたどり着いた結論はシンプルです。リーダーがやるべきことは「メンバーにAIを使わせる」ことではなく、まず自分の解像度を上げること。自分の道具の機能を知る。試す。限界を確かめる。その経験をチームに還元する。
もし同じような状況にあるリーダーの方がいたら、たとえばこんなところから始められるのではないかと思います。
- まず自分自身が毎日少しの時間、AIツールを業務で使ってみる
- 週に一度、チームで「今週AIで試してよかったこと」を共有する場を作る
- 1on1で「最近AIで困っていること」を聞いてみる
- うまくいかなかった経験も含めて、リーダー自身が先にオープンに話す
「使ってください」は意思決定ではありません。道具を使いこなし、チームのAI成熟を自分ごととして動かしていく。それが今のリーダーに求められていることではないかと考えています。
終わりに
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